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クリエイターズ・インタビュー:料理研究家 エリオットゆかりさん

今回のゲストはイギリス在住の料理研究家、エリオットゆかりさんです。百貨店イベントやカルチャースクールの講師、食やライフスタイル関連の企業とのコラボレーションを多く手がけ、今年もさまざまなプロジェクトが進む予定でしたが、今はご自宅時間を楽しみながらこれからできることを準備している日々だそう。4月に行ったインタビューをご紹介します。

ゆかりさんの現在のご活躍のきっかけは、料理ブログだったんですよね。

はい。イギリスに移住した2年後の2002年に、日本の友達に元気でいることを知らせよう、くらいの気軽な気持ちで始めたんです。子どものときから料理が好きで、母を早くに亡くしたこともあり、若い頃から父のために料理をするのが習慣でした。イギリスではホームパーティで作った料理がきっかけでケータリングビジネスを始めることになり、日本ではブログに作った料理をアップしているうちに読んでくださる方が増えて「料理ブロガー」と呼ばれるようになり、依頼されてレシピを作る仕事もするようになりました。

自然に料理のお仕事への道が開けていったんですね。そんなゆかりさんのお仕事を、ご自身で表現すると、どんな言葉になりますか?

イギリスの暮らしを紹介しながら、みなさんに喜んでもらえるレシピや暮らしのアイデアを発信する人、というところかな。料理研究家は研究するという意味では合っていると思うのですが、自分を料理家と呼ぶことにはちょっと勇気が要るんです。私は学校で料理を学んだわけでもないし、専門があるわけでもないので。一時、マネージメントをお願いしようと思って事務所に所属していたのですが、入るときに「あなたは何料理を作る人ですか?」と聞かれて、簡単・節約でも、創作和食でもない、イギリスに住んでいるけどイギリス料理でもない、自分らしさって何だろう? と悩んだ時期もありました。でも、一つに決めてしまうのも自分じゃないなと思って。目の前のことを毎回真剣にやるうちに、おかげさまでご縁がつながり、仕事の幅も広がってきました。ブログはもう18年続けているのですが、私の原点はブログだ、ということは忘れずにいたいと思っています。

ロンドン近郊から昨年、歴史ある街バースに引っ越しされたんですよね。新しい家のことについて聞かせてください。

新居だけど、古い家なんですよ(笑)。築250年、ジョージアン時代の家です。バースは古くから温泉療養で栄えた街で、イギリス各地のお金持ちの社交場でもある別荘地でした。そんな土地にある家なので、召使いの人が料理をするための半地下のキッチンがあります。改築して地上階にキッチンを作り直す人もいますが、私の住んでいる家の主は代々、半地下キッチンのまま住んできたようです。ちょっと薄暗いんですが、これが意外に落ち着くし、夜はワインバーのような、なかなかいい雰囲気になるんです。

古いキッチンドレッサーがインテリアのポイントになっていますね。

このドレッサーは備え付けでした。いつの年代のものか不明なのですが、ジョージアンまでは古くなさそうです。いろいろな意見がありますが、おそらくヴィクトリアンのものかと思います。ティーポットやティーカップのコレクションが引き立つように、「ファロー&ボール」のオフブラックという色で塗装しました。しまう収納に慣れていたので、最初はこんなに大きな見せる収納のスペースがあることに戸惑いましたが、今はお店のディスプレイ気分でデコレーションを楽しんでいます。



ところで話は変わりますが、今、手がけているプロジェクトについて、一つピックアップして教えていただけますか?

お声がけいただいたのはもう3年近く前になるのですが、岐阜県多治見市の井澤コーポレーションさんの「OISHIIプロジェクト」から生まれた「The Light Porcelain」という器ブランドのPRのお手伝いをしています。エコで超軽量で機能的、和洋を問わずどんな料理にも合わせられるデザインで、日本の伝統を大切にしながら、電子レンジや食洗機にも対応する、現代の用途に合ったグローバルな器です。陶器業界の活性化や、日本の器のよさを海外に発信するなどさまざまなミッションのある壮大なプロジェクトなのですが、私の主な役割は、実際の使い方をレシピやテーブルコーディネートでご紹介すること。「Dining Frame」というプロジェクトサイトもあります。

器が生まれる背景を知って欲しいとのことで、日本全国の窯元めぐりもさせていただきました。家族経営の工房にお邪魔して、職人さんにお話を聞きながら、型作りや絵付けを見学したのですが、作陶の雰囲気や作る人たちのリアルな姿に触れたことで、この魅力を伝えたい思いがさらに強くなりました。今後も皆さんとじっくり温めて取り組んでいきたいです。

ゆかりさんが、お仕事で一番大切にしていることは何ですか?

遠く離れた日本とのやりとりはメールが多くなりますが、距離やタイムラグを感じさせないように、なるべくすぐにお返事をします。それから、何かポジティブな気持ちが伝わるような、仕事以外のちょっとした楽しいことも書き添えるようにしています。文字だと伝わりにくいこともありますが、コミュニケーションがなめらかになるように心がけることは、とても大切だと思っています。

ブログもたくさんの方が読んでくださっているので、いつも自分なりにすごく考えます。昨夜もあるテーマについて書いていて、これはある立場の人にとって配慮の足りない内容になる可能性があるかも?と考え込んでしまって、いったんストップしたりなんてことがありました。


ゆかりさんのメール、いつもとても楽しいです。個別のメールがきめこまやかなだけじゃなく、ブログやSNSでも活発に発信されていて、そのレスポンスも実に丁寧ですもんね。

共感してくださる方に支えられているので、人間関係が一番大切です。オープンマインドに、気取らず、気負わず、のんびりやっていますが(笑)。

失敗や辛いこと、痛い目に遭ったことももちろんありますが、何かあっても「このことを知るためだったんだ、意味はあったんだ」と捉えると、その出来事とよい形でお別れできますよね。落ち込むことがあっても、どれだけ短い時間で切り替えられるかの勝負。ネガティブな波に飲まれると、そこしか見えなくなってしまうから。


なるほど。スーパーポジティブですね。

私、もともとはこういう性格ではなかったんですよ。オープンな性格になろう!って、自分で決めて変わりました。それは、ある友達の影響なんです。国際結婚した同士、仲良くしていたママ友がいて、ある日親子で遊んだ後に、当時はFAXだったんですが「今日はとても楽しかった。また遊ぼうね」とメッセージを送ってくれたんですね。私も楽しかったんだけど、言葉にしていなかった。そのとき「これを言うか言わないかでだいぶ違うんだ」と気がついたんです。楽しいことやうれしいことを態度に示すのは、周りの人にとってもうれしいことなんだと腑に落ちたんですね。自分が思うポジティブなことをできるだけ表現して、彼女みたいになりたいと。ただのお礼メールよりも、共通の楽しかったことを言葉にして記すと、より印象に残るし、そういうことをいいなと思ってくれる人とつながっていけます。

一歩一歩ステップアップしている理由は、ご自分では何だと思いますか?

以前、日本に1年半も帰れずにホームシックになってしまったことがあって、そのとき「次の帰国までに、仕事で日本に行ける人になろう」と心に誓いました。それが最初の目標でした。それが叶い、日本での百貨店のイベントで初めてお話をしたのですが、緊張しまくって、それを思わず口にも出してしまったくらい。見ていた息子に「自信がないことをお客様の前で言っちゃダメだよ」と叱られました。

そんなふうに、目の前のことを一つ一つ精一杯やって、気がつくと少しずつ進化してきている感じです。それが自分の人生の進め方なのかな。あまり野心がないし、有名になりたいとも思っていないけれど、少しだけ先に小さな目標を作って、そこに向かって進んでいたら、次の目標が見つかって、そしてまた先に進んで……ということを繰り返していたように思います。

自然体で着実に。それが一番いいですね。では、今に話を戻して、凝っていることや注目していることはありますか?

ロックダウン中、家で時間があったので、それまでやったことのなかった動画配信を始めたんです。自分の中でポジティブになれることを探していたら、ブログ以外に楽しんでもらえるコンテンツとして、ふと「動画もいいな」と思い立って、その日のうちにトライしました。料理と同じで、たとえ失敗しても数時間後には完成するんだ、というのが新鮮な発見で、面白くて。でも同時にすごく恥ずかしかったので、初めは声だけにしました。録音するときも家族に「誰も部屋に入って来ないで!」と言い渡して(笑)。

それで実感したのが、思い立ってアクションすることは大事だな、ということ。何気なく始めたことでもリアルに反応してくれる人がいる。今さらYouTuberになるつもりはないのですが、すべてはタイミングで、導かれているときって時間を忘れて楽しいですしね。


最後に、これから目標にしていることや、やりたいことは?

また本を出してみたいけれど、それも自分にとってのベストのタイミングがあるだろうと思っています。大掛かりな夢や野心があまりないのは、今が幸せだからなのかなぁ。日本に帰るたびに会いに来てくださる、支持してくださる人たちがいるので、今はとにかく、皆さんに会いたいです!


インタビューを終えて

ゆかりさんはとにかく人気者。人柄の良さがにじみ出るオープンマインドな笑顔と、ハッピーオーラいっぱいのメッセージに魅了される人がいっぱいです。今回お話しして改めて、それは一回一回のコミュニケーションに惜しみなく真心を込める人だからこそなんだと思いました。ゆかりさん、日本のファンの皆さんとリアルに交流できる日が早く来るといいですね!


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