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大好きすぎて遠ざかっているもの

(2025年3月7日配信のニュースレターをこちらにも掲載します)


こんばんは。エディターの田村です。


Photo/Tonia Kraakman
Photo/Tonia Kraakman

少し前に、石井ゆかりさんの占い週報を読んでいて「本当にそうだよなぁ」と思ったことがありました。ちょっと特別な調味料を大切に使おうとして、うっかり消費期限が切れてしまった…といった例から、「大事にしすぎて、宝の持ち腐れになる」現象についての一節でした。

 

これ、本当によくあることですよね。 「大切にしておこう」という気持ちが逆に働いて、結局使われないまま時が過ぎていくことのもったいなさ。

 

これ着ると気分が上がるな!と思って、ちょっと高かったけど買った、きれいな色の服。手に取るだけで楽しい気持ちになれるのに、考えてみたら、今シーズン一度も着ていない。

 

大好きな作家さんの器。「誰かが来たら」「特別な日に」と思っているうちに、最近あまりお客様も来ていないから、食器棚の奥の方でずっと出番を待っている状態に。

 

お土産でいただいた高価なフレグランスを「もったいない」と思って大切にしすぎて、いつの間にか香りが変わったり、飛んでしまったり。

 

買ったまま本棚に眠っている本たち。読みたいと思ったフレッシュな気持ちの時に読んだ方が身になるのに、「いつか読もう」と思っているうちに、そのまま忘れてしまう。

 

モノだけの話ではなくて、人や場所、お金やアイディアについても同じことが言えるような気がします。

 

「あの人にこんなことを相談したいな」「提案を持ちかけたいな」と思っていたけれど、「忙しそうだから」と遠慮しているうちに、その機会を逃してしまう。

 

「いつかあの場所に行きたい」と思いつつ、「時間ができたら」「経済的余裕ができたら」と先延ばしするうちに、行けない事情ができたり、その場所がなくなってしまったり。

 

「いつか形にしよう」と温めているアイデアのメモ。大切なインスピレーションだから、もっと完璧な形になるまで取っておこう...と思っているうちに、その鮮度が少しずつ薄れ、時代の空気も変わって使いづらくなってしまう。

 

「もっと腕が上がってから」と思って控えてきた、本当はやりたかった仕事の提案や発信。「この企画は絶対に成功させたい」という思いが強すぎて、チャンスを見送り続けているプロジェクト。完璧なタイミングを待っているうちに、似たようなコンセプトを他の人が形にしてしまったり、情熱の温度が少しずつ下がってしまったり。

 

ふと気づけば「大切にする」という名目で、実は自分の大好きなものや人や場所、そして創造性から、少し遠ざかっていることがないでしょうか。

 

小さなことでいいのです。大切にしていた調味料を使っておいしい料理を作る、たまにしかつけないとっておきのジュエリー(香水やクリームでも)をつけて、一日良い気分で過ごす。会いたい人にアポを取って会いに行く、眠らせていた仕事のアイディアを実行に移す。

 

この週末、大好きすぎて、リスペクトしすぎて、遠ざかってしまっているかもしれない「とっておき」に触れる時間を、意識して作ってみませんか。新年度からの展開が、何か少し変わるかもしれません。

 

どうぞよい週末をお過ごしください!

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